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複雑さを維持するコスト

私たちの周りのシステムは、善意の追加や変更が積み重なり、気づけば複雑怪奇なものへと変貌しています。

この「複雑さ」を維持するためには、目に見えるものから見えないものまで、膨大なコストが支払われ続けています。

複雑なシステムの本当のコストは、運用が始まってから顕在化します。

一つの変更が予期せぬ副作用を生むためメンテナンスは困難を極め、将来にわたって「技術的負債」としてコストを要求し続けます。

また、新しい担当者が全体像を理解するための教育コストも増大し、組織の生産性を静かに圧迫していくのです。

不思議なことに、複雑さを増やすのは易しく、減らすのは難しいものです。

新しい機能やルールを追加することは、抵抗が少なく評価にも繋がりやすいため、安易に繰り返されがちです。一方で、何かを「減らす」という決定は、たとえ少数でも利用者の反対に遭うなど、感情的な対立を生みやすく、大きなエネルギーを必要とするため敬遠されます。こうしてシステムは新陳代謝のないまま肥大化を続けます。

そもそも人間が扱える複雑さには「認知負荷」の限界があります。システムがこの限界を超えて複雑化すると、利用者は全体像を把握できず、操作ミスが増加します。

これは管理者にとっても同様で、質の高い改善を妨げるだけでなく、ストレスや燃え尽き症候群の原因となり、組織の創造性を静かに蝕んでいきます。

私たちは、複雑さがもたらす見えないコストをもっと真剣に評価すべきです。

新しいものを追加する際はその将来コストを問い、既存の複雑さを削減する努力を積極的に評価する文化が必要です。

ソフトウェア開発の世界には「KISSの原則(Keep it simple, stupid.)」という有名な教えがありますが、これはまさにその核心を突いています。

シンプルさは美学ではなく、持続可能で健全なシステムを維持するための重要な戦略なのです。

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冨 洋一
冨 洋一
Kompiraシリーズ導入時のジョブフローセミナー、Kompiraメールマガジン執筆などを担当。 総研の研究部門、技術ベンチャーの技術責任者、アクセス解析ツールの商品開発部門長などを歴任。 Markezine Dayなどデジタルマーケティング関連の登壇実績多数。

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