
サプライチェーン障害に備える 止まる時間を短くする3つの実務
先週、業務影響の話題として象徴的だったのが、ニチレイグループで発生したサイバー攻撃によるシステム障害です。冷凍食品メーカーという印象が強い企業ですが、実際には国内有数の低温物流(コールドチェーン)事業者でもあります。そのため、物流機能の停止は同社だけにとどまらず、ケンタッキー・フライド・チキンをはじめとする外食チェーンや食品メーカー、小売業など、幅広い企業へ影響が波及しました。
システム障害の公表後、原因がサイバー攻撃であることが明らかになり、数日で物流機能は順次再開しました。一見すると短期間で収束したように見えます。ただ、ここで本当に問うべきなのは「何日止まったか」だけなのでしょうか。今回の事例が突きつけたのは、停止の長さだけでなく、停止がどこまで広がるかという問題です。
報道では、外食チェーンの営業時間短縮や一部商品の販売休止、スーパーでの欠品、給食や中小メーカーの出荷調整など、さまざまな影響が伝えられました。TVでは材料が仕入れできなかった食品製造の店主が「まさか、うちも影響受けるとは。初めて納期を遅らせる交渉をした。」などとインタビューに答えるシーンを見かけました。システム停止の影響は、自社内だけで完結するものではなく、物流網や取引ネットワークを通じて取引先や顧客へ連鎖し、サプライチェーン全体の業務停止につながることが、改めて浮き彫りになりました。
この事例から見える課題は、業務がどの外部サービスや取引先に依存しているかを十分に把握できていないこと、そして停止時の代替手段が十分に準備されていないことです。自社システムが正常に稼働していても、保管、配送、発注、決済などの重要な機能が一つ止まれば業務は継続できません。では、先に何を整えるべきでしょうか。まず取り組むべきなのは、障害原因の分析より先に「どの外部機能が停止すると、どの業務が何時間で停止するのか」を整理することです。
業務停止時間を最小化するための取り組みは、次の3点に整理できます。
(1) 依存先を可視化する
重要業務ごとに、倉庫、配送、決済、通信、連絡基盤などの外部依存を業務フローとして整理し、単一点障害となる箇所を洗い出します。今回でいえば、低温物流への依存が見えた時点で、影響の広がり方はかなり予測できたはずです。
(2) 代替ルートを事前に設計する
障害発生時に切り替える委託先や手動運用の手順、優先的に継続する商品・サービスの範囲などを平時から決めておきます。外食チェーンの営業時間短縮や販売休止が発生した局面でも、代替ルートが定義されていれば、停止範囲を限定しやすくなります。
(3) ダウンタイムを管理する
障害発生から15分、30分、60分といった時間軸ごとに、判断者、連絡先、業務継続・停止の判断基準をあらかじめ定めます。復旧後は停止時間や機会損失を振り返り、次回の判断基準へ反映していくことが重要です。スーパーでの欠品や出荷調整のような二次影響は、この時間管理の精度で大きく差が出ます。
これらは大規模な投資を伴わなくても始められます。まずは重要業務を一つ選び、外部依存の洗い出しと代替手順の確認を月に一度実施するだけでも、障害発生時の初動対応は大きく改善できます。
サイバー攻撃そのものを完全に防ぐことは容易ではありません。しかし、「止まる時間」を短くすることは運用設計によって実現できます。営業時間短縮、欠品、出荷調整という今回の連鎖を一過性のニュースで終わらせず、自社の依存関係や代替手順を見直す機会にできるかどうか。そこが、次の混乱で止まる時間を短くできる企業と、影響を受け続ける企業の分かれ目になるでしょう。


