catch-img

運用ナレッジが消える会社の共通点 外部委託時代の「引き継げる運用」設計

IT人材の採用が厳しい、という話は本当によく聞きます。先日、ある会社でマネージャーをしている友人から聞いたのですが、採用基準を「必要スキルがあり、英語で業務が回せるなら可」に広げたところ、チームがほぼ外国籍メンバー中心になったそうです。もちろん極端な例ではありますが、似た話はいまや珍しくありません。人が足りなくなると、いわゆる「一人情シス」のワンオペになったり、業務を丸ごと外部委託したり、という流れがどうしても起きやすくなります。

そして、運用担当の異動や委託先の切り替えのたびに、障害対応の品質が揺れます。これは多くのIT部門に共通する悩みです。手順書はあるのに初動が遅れる、同じ障害を繰り返す、復旧後の説明にも時間がかかる。背景にあるのは、作業手順そのものより「判断の根拠」が引き継がれていないことです。

最近は、内製と外部委託を組み合わせる運用体制が当たり前になっています。24時間監視、一次対応、二次対応、業務部門連携と役割が分かれるほど、どうしても情報は分断されやすくなります。誰が何を見て、どの基準で優先順位を決め、なぜその対応を選んだのか。この判断の履歴が残っていないと、担当者が変わった瞬間に運用品質は落ちます。

引き継げる運用を作るために、見直したいポイントは4つあります。

第一に、記録単位を「作業」から「判断」に変えることです。実施手順だけでなく、判断時に参照したアラート、影響範囲、却下した選択肢を短く残します。

第二に、障害レビューのたびに「しきい値を足し続けない」ことです。現場では再発防止の名目で判定条件を細かく足し続けた結果、メトリック判断ロジックが数百から数千に膨らみ、監視や通知の仕組みそのものが複雑化するケースがあります。こうなると、日常運用が重くなるだけでは済みません。ツール移行やルール見直しのコストまで一気に跳ね上がります。ここは、ルール追加時に「廃止期限」「適用範囲」「代替可能性」を同時に定義し、定例レビューで減らす前提を持つことが有効です。

第三に、月1回の引き継ぎ演習を行うことです。新任者が過去記録だけを使って初動判断できるかを確認すると、文書の不足だけでなく、判定ルールの過剰さや矛盾も見えてきます。

第四に、前任者が作成したツール、スクリプト、難易度の高い作業用ツールの設定を「個人資産」にしないことです。実行環境、依存パッケージ、認証情報の保管場所、失敗時の復旧手順までをセットで記録し、第三者が再実行できる状態を維持します。特に、障害時だけ使う特別な設定は引き継ぎ漏れが起きやすいので、平時から点検対象として見える化しておくことが大切です。

外部委託時代に必要なのは、担当者が替わっても同じ品質で判断できる仕組みを先に設計しておくことです。運用の強さは、熟練者の経験量だけでなく、経験を組織知として再利用できるか、そして増えすぎたルールを整理できるかで決まります。障害時の判断理由が記録され、不要になった判定ルールが定期的に見直される状態を維持できるかどうか。そこが、引き継げる運用の分かれ目になります。

システム運用自動化サービス「Kompira」って?

・製品資料ダウンロードはこちら

・各種セミナーはこちら

冨 洋一
冨 洋一
Kompiraシリーズ導入時のジョブフローセミナー、Kompiraメールマガジン執筆などを担当。 総研の研究部門、技術ベンチャーの技術責任者、アクセス解析ツールの商品開発部門長などを歴任。 Markezine Dayなどデジタルマーケティング関連の登壇実績多数。

メルマガ登録

人気記事ランキング

タグ一覧