
IT運用のエラープルーフ化で考える「エラーに関する3つの誤解」
システム障害や設定ミスが起きるたびに、「もっと注意してほしい」「教育を強化しよう」「ダブルチェックを増やそう」という対策が検討されます。
しかし現場負荷が高い状況では、これらの効果は頭打ちになりやすいです。
今週は、IT運用で繰り返されがちな「エラーに関する3つの誤解」を整理します。
エラーに関する3つの誤解
・1つ目の誤解は、「ヒューマンエラーは注意力で防げる」です。
人の注意力は一定ではなく、夜間対応や割り込み対応が増えるほどばらつきます。
個人の集中力に依存する設計は再発を招きます。
例えば、障害対応中に本番サーバーの接続先を誤る事故は、不注意だけでなく環境識別の仕組み不足でも起きます。
対策として、入力値の自動検証、危険操作のガードレール、実行前の機械的チェックを実装することが重要です。
・2つ目の誤解は、「ヒューマンエラーは教育・訓練で防げる」です。
ここでの論点は、異動による人の入れ替えで教育が無駄になる、という話ではありません。
標準と異なる作業が起きたときに「標準を知っていたか」「標準通りにできたか」「標準を守るつもりだったか」を確認します。
この3つを満たしていても発生する、つまり教育・訓練・動機付けでは解決しない領域が一定割合で存在し、中央大・中條先生の研究では40%に達する結果が示されています。
教育の強化は重要ですが、それだけでは不十分であり、手順・画面・機器設定・確認方式といった作業方法そのものの改善が必要です。
・3つ目の誤解は、「ヒューマンエラーは人による検査・確認で防げる」です。
人手確認は重要ですが、確認項目が増えすぎると形骸化し、見落としも発生します。
特に高頻度の定型作業では、確認を増やすほど遅延と疲労が蓄積します。
例えば、毎週のパッチ適用で2名の目視確認を義務化しても、観点が曖昧だと未適用サーバーを見落とします。
二重確認に頼る前に、差分検知、承認条件の自動判定、監査ログの自動収集を設計する視点が求められます。
ここで押さえたいのは、人間は柔軟で創造的である一方、一定確率でエラーを起こすという前提です。
この特性は変えられないため、再発防止の中心は、意識改善だけでなく、ツール、機器設定、文書、手順といった「人以外の要素」の改善になります。
注意力低下を不注意で片付けず、誰でも意識レベルは下がり得るという共通認識を持って作業方法を設計し直すことが、エラープルーフ化の核心です。
エラープルーフ化の要点は、「人を責める」ことではなく「人がミスしても事故になりにくい仕組み」を作ることです。注意喚起、教育、確認を否定するのではなく、仕組み化で補完することが現実的です。


