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非技術者が担う自動化の光と影

先日、若手のマーケティングの担当者と話をしていた際に「会社のWebページをGoogle Antigravityを使って全部作り切りましたよ」と聞かされて、サイトを見せてもらったら、デザインからフォームまで一通り完成していて驚きました。

AIエディターはエンジニアが便利に使うツールの認識がありましたが、非技術者にも広まりつつあるようです。

「誰でも簡単に業務を自動化できる」というメッセージのもと、AIエージェントやAIブラウザが注目を集めています。

プログラミング不要で自然言語の指示だけで自動化を実現できるとされ、非技術者による自動化実装も急速に広がっているようです。

しかし、IT部門が直面しているのは「動くことと、運用できることは別」という現実です。

2020年代前半はRPAブームでしたが、多くの企業が「作ったはいいが保守できない」という課題に直面しました。

2025年以降、AIエージェントやAIブラウザによる自動化は、RPAよりもさらに手軽に導入できる一方で、保守性の課題はより複雑化しています。

従来の自動化技術を整理すると、それぞれ異なる特性があります。

RPAは画面操作の記録・再生が基本で、UIの変更に弱く、メンテナンスコストが高い傾向があります。

PaaS(iPaaS)はAPI連携によるワークフロー自動化で、安定性は高いものの、API提供が前提となります。

ローコード/ノーコードツールは視覚的なワークフロー構築が可能ですが、ツール固有の学習コストがあります。

これに対してAIエージェントやそれらを活用したアプリは、自然言語での指示が可能で、状況に応じた柔軟な判断ができることが特徴です。

例えば「毎朝9時に昨日の売上データをExcelにまとめてSlackに投稿」という指示を自然言語で与えるだけで実装できます。

また、「データの形式が変わっていたら適宜調整する」といった曖昧な要件にも対応できる可能性があります。

これらは確かに便利ですが、非技術者が実装した自動化には構造的な課題があります。

第一に「動作の再現性」です。AIエージェントは同じ指示でも毎回微妙に異なる動作をする可能性があり、エラーハンドリングが不十分になりがちです。

第二に「ブラックボックス化」です。

なぜその処理をしているのか、どういう条件分岐があるのかが明示的でなく、トラブル時の原因究明が困難です。

第三に「依存関係の見えにくさ」です。

対象システムのUI変更、API仕様変更、データ形式の変更などに対する耐性が低く、ある日突然動かなくなります。

第四に「バージョン管理の欠如」です。誰がいつどのように変更したかの履歴が残らず、問題が起きたときに前の状態に戻せません。

RPAと同様の問題が、より高度な形で再現される可能性が高いと言えます。

RPAは少なくとも「どの画面のどのボタンをクリックする」という手順が明示的でしたが、AIエージェントは「適切に処理する」という曖昧な指示で動くため、何をしているかの把握がさらに難しくなります。

業務におけるAI利用のガバナンスは主にデータ漏えい対策がメインで、利用できるAIツールやAIに与える情報の制限するものでしたが、自動化用途でのAI利用に関しても検討する必要があります。

また「適材適所」として、業務クリティカルな処理や複数部門にまたがる処理におけるAI利用は、処理の再現性や保守性を考慮して従来型の開発(API連携、スクリプト、PaaS)との住み分けが必要です。

具体的には、以下のような基準が考えられます。

AIエージェント適用可:個人利用、一時的な作業、失敗しても影響が限定的、データの機密性が低い。

従来型開発推奨:複数ユーザー利用、継続的な運用、失敗時の影響が大きい、機密データを扱う、監査証跡が必要。

AIエージェントは、非技術者が自動化の恩恵を受けられる画期的な技術です。

しかし「誰でも作れる」ことと「誰でも保守できる」ことは別の話です。

IT部門は、この新しい自動化手段を適切に活用するためのガイドラインと支援体制を整備する必要があります。

重要なのは、AIエージェントを既存の自動化技術の「代替」ではなく「追加の選択肢」として位置づけることです。

RPAの失敗から学ぶべきは、手軽さだけで導入を決めず、ライフサイクル全体を見据えた判断が必要だということです。

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冨 洋一
冨 洋一
Kompiraシリーズ導入時のジョブフローセミナー、Kompiraメールマガジン執筆などを担当。 総研の研究部門、技術ベンチャーの技術責任者、アクセス解析ツールの商品開発部門長などを歴任。 Markezine Dayなどデジタルマーケティング関連の登壇実績多数。

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